新着情報慶應大学講演
 
トークイベント

日 時: 平成16年8月3日(木) 15:30〜17:00

会 場: 慶應義塾大学・三田校舎

主催者: 慶應義塾大学・文学部人間科学

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「私が行っている実践人類学」

Christopher R. Keener
紀井奈 栗守
株式会社
 

私が幼い頃、海軍に勤務していた父は度々日本を訪れていた。横須賀からのお土産として鯉のぼりやトランジスターラジオなどをもらった。まだ見ぬ日本に対するイメージは、古きよき時代と高度成長期が混在する不思議な国だった。

母の躾は大変厳しく、添加物、炭酸飲料、砂糖、保存料を使用したものは与えてもらえなかったし、テレビもない生活であった。

私が入学したアイビー・リーグのブラウン大学では、基本的に必修科目がなかった。 中学時代、必修科目である外国語としてフランス語を学んできたがあまり好きではなかった。しかし、大学で自由な環境になったこともあり外国語を学ぶ意欲がわいてきて、2年生の時に日本語を学び始めた。そして、3年生の2学期に日本の社会と文化について学んだ。

ブラウン大学は、2年の2学期修了までに専攻を決めることになっていた。1年生では興味があった文学の講義を受けていたが、得意分野であったコンピュータを専攻することに決めた。
大学3年の時、最先端のコンピュータを搭載した研究所ができ、そこでビーマン教授が率いた研究チームに参加させてもらった。

4年生の時、ビーマン教授から大学院ではコンピュータではなく人類学を専攻したほうがいいのではないかと勧められた。当時の人類学では科学技術、先進国での研究を許さなかったのだが、ビーマン教授にカリフォルニア大学のN教授を紹介してもらいカリフォルニア大学バークレー校に入学した。

大学院1年目、もともとコンピュータ専攻であったことと、ゼミの1学期は英国で学んできた社会人類学者によるものであったため、大変厳しいものだった。 1年の2学期からやっと慣れ始め、指導教授から学生としてではなく教授と対等な立場での意見を持つようにと言われ、次第に自信が出てきた。

博士論文の研究のため奨学金をいただき日本へ行き、さらに日本での指導教授として経済学者のK先生を紹介してもらった。 K先生が勧めてくれた研究の対象地域は人口1万6千人で中小企業が400社もあり、40人に1人が社長であるという長野県の坂城町だった。 坂城町は、降水量が少ないため金属が錆びないので金属加工にぴったりの地域である。

昔、家内工業として養蚕から製糸を作り織物を織っていたので、工場に慣れている環境でもあった。また、系列企業に属さず独自の技術をもっている。 いろいろな会社を設立した人の話を聞いているうちに、自分の子供のころの夢を思い出し、また教授や学問の道へ進むにはまだまだ経験が足りないと思い、コンサルティング会社を設立した。

最初の取引先となったのはブラウン大学の研究からスピンアウトしたソフト会社だった。 日本の一流企業の系列会社とアメリカの小さなコンピュータソフト会社が円滑に付き合うことをサポートする仕事をした。
仕事のほとんどが口コミにより成り立っている。会社を設立した当初は、アメリカの小さな会社が持っていた優れた技術を日本で広めるという仕事を請け、主に代理店を設けたり、その技術を使ってもらえる企業探しや製品のサポートを行った。それと同時に日本とアメリカの企業間で契約を締結させる際に生じるさまざまな問題点を解決する役割も果たした。

アメリカの企業から仕事を請ける際はドル契約だったため円高になると資金繰りに苦労したので日本企業からの仕事も受注する必要があった。 ちょうど、日本の系列企業が探していた技術を持つアメリカの会社があり、その製品の技術サポートを行う機会に恵まれ、為替の動向に神経を尖らせることから少しだけ解放された。

現在の取引先の一つは、テキサス州に本社を持つサプリメント直販売の上場企業である。日本法人の立ち上げとコンピュータのシステム化、ベンダーとの打ち合わせ等のサポートを行って7年程になる。

将来の希望として、人類学者しかできない仕事を請けられるような人類学者のネットワーク作りを行い、まず外国の企業や研究機関を最初のターゲットとして最終的に日本の企業に対するサービスを目指したい。また、利益を目的とした研究だけではなく、複数の学者と共同研究を行い有名な専門誌に論文を発表したいと考えている。

実践人類学の未来を想像してみると、携帯電話やiPOD/PDAのような小型電化製品が研究対象となるだろう。小型電化製品の市場は日本が世界第2位であるため海外企業は日本市場への参入が難しいと思われる。そこで海外で存在が認められている人類学者が必要になると思う。技術者は多くの機能を創造することはできるが、それがヒット商品になるかどうかまでは予想できないため、日本でも人類学者の存在が必要であると認め始めるのではないかと思われる。

 
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