新着情報経友スマイル「創造力と親孝行」
 

 

 

経友スマイル
発行元:長野県中小企業経友会事業協同組合
発行日:平成15年2月25日(第98号)

創造力と親孝行

株式会社 鴨 (上山田町)
代表取締役 紀井奈 栗守

私が18年前に初めて日本に来た頃は、日米の文化の違いが今よりずっとはっきり捕らえられていたように思う。典型的なアメリカ人像は、西部の開拓地を突き進むジョン・ウェインのような姿であり、またそれに対して日本人像とは、似通ったダークスーツに身を包んだサラリーマンというわけだ。別な表現をすれば、自己中心的な創造力が評価され重んじられる文化と、伝統や年長者・祖先を敬う文化という対比でである。私には、これがその後、変わってきたように思える。

アメリカ人は日本社会には創造力が乏しいと決め付けることがあるが、私は最近、日本の創造力は面白いところに見られるなと感じている。その例を三つほどお話したい。私は仕事で東京に行くと、よく「吉野」という小さな居酒屋で食事をする。不況が長引く中で、経営者の吉野さんはあえて価格を引き上げた。同時に、店内の照明を暗くし、メニューを京風の料理に変えた。始めは戸惑いを感じたが、しばらくして、店の雰囲気が変わっていることに気づいた。以前よりも連れや相客とゆったりと寛いで話せるのだ。

私はここで前田先生という男性と知り合った。前田先生の趣味は、江戸時代に流通されていた陶器のかけらを海辺で収集し作品を作ることである。このことを米国の母に話すと、母はその後、近くの浜辺で自分が拾った様々な破片を私に送ってくれた。これを前田先生にお送りしたところ、前田先生は大変、喜んでくれた。昨年、母が来日した折りには、私たちは前田先生ご夫妻と夕食を共にする機会をもち、作品についてお話を伺った。大量生産、大量消費の今の時代に、前田先生は200年前の廃材を美しい作品として蘇らせている。私は深い感銘を受けた。

先日、妻と買物をしているときに、偶然、妻のお茶の先生だった豊城さんにお会いした。豊城さんのご主人は長野市で喫茶店を経営しておられたが、戸倉町から店まで出かけるのがだんだん大変になり、店を閉められたという。しかし、一日中、テレビを見てすごす生活になると心配し、ご主人は自宅の一画に小さな喫茶店を開くことにした。店からの眺めはすばらしい。千曲川を見渡すことができる。コーヒー一杯がわずか250円。金もうけのためではない、心に張り合いを求めて始められたのだろう。

私はこの3人の皆さんはそれぞれに創造力を発揮されていると思う。アメリカでは、年齢とともに創造力は衰えると考えがちであるが、皆さん、年齢を重ねた方々であるのが興味深い。アメリカの創造力の象徴的な存在の一人である、スティーブン・スピルバーグ氏が最近、こんなことを言っている。「両親の言葉に、耳を傾けよう」。母が日本に滞在していた1ヶ月間、親孝行に励んだ私だが、シニアの皆さんの創意工夫に目をとめることが、日米の典型的なあり方の変化を理解するのにも役立つように思えるのだ。

 
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